九月【誕生花・リンドウ/誕生石・サファイア】(BL)
縦横変換 しとしとと、雨が降っている。気丈にも涙一つ見せない君の代わりに、天が泣いているのだろうか。
気丈にも、というのは間違いかもしれないね。ショックが大きすぎて、なのに気を張らないといけなくて、嘆く余裕がないだけというのが正直なところだろう。後で、慰めてあげたいけれど……君はきっと、すぐには僕の手を取らないに違いない。
今回のことは、本当に誰にとっても青天の霹靂だった。あんなに幸せそうに笑っていたのに、どうして。どうして君はそんなに硬い表情で、婚約者の葬式の喪主なんてさせられているんだろうね。おかげで僕まで、とても複雑な気分だよ。
やっと、やっと君のことを諦めて、友人の一人として行く末を祝ってあげられる、そこまで気持ちを整理したつもりだったんだ。なのにその相手はもういなくて、君は独り、泣きたくても泣けないくらい、悲しみに打ちひしがれている。一緒に悲しめば良いのに僕は、君を諦めなくても済む可能性に気付いてしまって、もう本当に、情けない限りだよね。
「リンドウ、君も来てくれたのか」
張り詰めさせていた雰囲気をほんの少しだけ緩めて、僕に対応してくれる。ああ、駄目だよサファイア。そんなに僕を特別扱いしたら、僕がつけあがっちゃうよ?
「今回のことは、本当に突然だったね……。お悔やみ申し上げます」
きっと今日一日で何度も聞かされてきたであろう挨拶に、君はしかめっつらだ。
「まったくだ。なんで俺を置いて、逝ってしまったんだ」
「追いかけるのかい?」
「いや、まさか。そんなことしてみろ、絶対追い返されるぞ」
辛いだろうに、軽口を叩いて笑う君がかっこよすぎて、僕はそっと目を伏せた。
キャラクター紹介
リンドウ
花言葉:「悲しんでいるあなたを愛する」、「誠実」、「正義」
秋の訪れを感じさせる、青紫色の花です。
衝撃的な花言葉から、ストーリーがサクサク、ヤバい方向に決まっていった。
サファイアに恋している青年。
やっと失恋から立ち直れるかと思っていたタイミングで、まさかの振り出しに戻され、とても複雑な気持ち。
サファイア
石言葉:「慈愛」「誠実」「貞操」など
深みのあるブルーが特徴的なサファイアは、「揺るぎない心の象徴」とされています。
結婚間近であったにもかかわらず、婚約者を亡くしてしまった薄幸の青年。
後を追う気はないようだが、新たな恋をするにはまだまだ時間がかかると思われる。
リンドウのことは、とても仲の良い友人の一人と考えている。