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DWO 005

 今日は気分が向いたので、自分の方から遊びに行くことにした。行先は、多分そこそこ有名な異世界風魔改造ワールド。
 マイマップと呼ばれる個人空間を最大限拡張し、内部に異世界を作り上げてしまった友がいるのだ。この世界そのものだって十分に広くて探索しがいがあるというのに、その友のマイマップ改造にかける情熱たるや。内部には友自作のキャラクターたちが多数暮らしている、と言えば、その一端を感じていただけるだろうか。
 ワールドの入口に行くことを思い浮かべれば、そこはもう目の前だ。常から見目麗しい青年のキャラクターが組になって門番をしているが、今日の門番の片方は特にキラキラと目に眩しいレベルの美丈夫だ。
「ああ、あなたですか。どうぞお通りください」
 門番の言葉に頷いて門を潜る、その前に。
「眼福だからって、これは目が潰れるレベルだと思う」
 存在感のやや薄い、もう片方に声を掛けておく。何故ならば。
「ちぇ、もう気付かれましたか」
「ここまであからさまにしておいて『気付かれましたか』はないよ」
 そう、もう片方こそが友本人だったからだ。この友、独自のアバター以外にも、こうして自作のキャラクターたちの中に入っていることがたまによくあるのである。
「それにしても珍しいですね? 『日の出づる土地』を目指して、今日もひたすら東に向かっているものだとばかり」
「気が向いたんだよ、たまにはこっちから出向いたって良いだろう?」
「明日は槍が降りますかねえ」
「この程度じゃ降らないと思うよ」
 この友が自らのワールドを離れるくらいしないと、槍は降らないと思っている。それほどに、この友は自分の世界にかける愛情が深い。
 ふらふらと気の向くままに遊んでいる自分とは、何か気迫のようなものが、違うのだ。
「今日も拡張作業?」
 訊ねてみれば、当たり前のように首肯された。
「そうですね、何せ人生は有限なので。急がないと、作り終えられないんです」
「ここの技術をフル活用しても、そうなんだ……すごいねえ」
 ある程度思考を反映できるこのドリームワールドオンラインにおいてすら、再現には時間のかかるらしい友の世界とは。
 いや本当、世界は広いものである。