新しく始める

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 いつものように監視かんしカメラを通して、自分の姿をながめている。
 一番懸念けねんされた、脳の機械への置換ちかんが記録的な早さで成功したため、ひとまず、存在消滅しょうめつの危機は過ぎ去ったらしい。だから後は義躯からだを作って、動かせられれば自分の完成だ。
 天音あまね兄さんが、とても張り切っていた。強力な無線を云々うんぬんかんぬん、とか言って。しかも、外見にも大幅に手が加えられて、ちょっとこれは、ツクリモノというか、まさに人形のようなというか、とにかく、端整たんせいすぎて、ずかしいレベルの美人に仕上がっている、気がする。
天音あまねにぃって、とにかくキレイなものが好きなんだよな。毎回毎回、どうして、こんなに美化しようとするのか」
 璃音りおん兄さんもそう言って首をかしげていたから、これは、今に始まった話でもないようだけれど。なるほど、兄さんたちの顔立ちが整っている訳だと感心した。
 天音あまね兄さんは繊細せんさいな芸術家なのだろう。きっと。
 もう家族みたいなものだよね、と天音あまね兄さんが言い出して、璃音りおん兄さんも普通に肯定こうていしていたから、末っ子としては精一杯せいいっぱいの敬意と親しみをめるべく、兄さんと呼ばせてもらうことにした。詩音しおんについては、どうやらお姉さんと呼ばれるのはいやみたいなので、そのままの呼び方を続けている。
 兄さんたちに詩音しおんの存在について伝えたら、予想通り、もしかしたらそれ以上に動揺どうようしていた。生死不明の状態だったそうで、生きているのは勿論もちろんうれしいけれど、簡単にいに行けそうにないのがつらいとのこと。
 実は、本格的に新しい義躯からだを得るまでに、改めて自分なりの話し方を模索もさくしようと思っている。作られかけの自分を見ながらどんな口調が似合いそうかなと考えるのは楽しいし、今までの有楽部うらべ光希みつき真似まねしたしゃべかたからは卒業したいと思って。