『かくて騒ぎが持ち上がる』嵐の予感

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 都市伝説がある。その名を、からくりめっおもてたいには姿を現さない、そうどうにんたち。
 一人はそうどうの火付け人、一人は夜空にまぎれるあんやくしゃ。一人は実在すらも定かではないゆうれい
 根も葉もない、とはちょっと言いがたいが、ひれ背びれは山のよう。いくら火のないところにけむりは立たぬとて、流石さすがにこれはえんじょうしすぎだろう。
 そんな思いから電脳世界へのじゅんかいを日課にしてしまったのは、実在も定かではないと言われるからくりの一人、のんである。ハッキングは、のんの最も得意とするところだ。ちょちょいと電脳けいばんみを改ざんしたり消したりするのは、朝飯前。何せ、のんの本来の仕事が仕事なだけに、単純なプログラムなどは、全く障害にもなりやしない。
 意識のかたすみで警告音が鳴り、のんまゆをひそめた。どうやら、その本来の仕事が、発生したようだ。
 特定のプログラムを常にえんかくで見張り、めいてきなバグやエラーが発生しないよう、メンテナンスを行う。ついこの間もそうして、パッチを当てた、はずだった。
 そののんかんくぐけ、久々にそうどうの火付け人がめんもくやくじょとばかり、暴れている。のんは血の気が引く思いだった。
おん兄さん! ちょっと、けてきます!」
 目立ついろかみかくすためのかつらかぶり、上着を羽織りながら自室を飛び出す。入り口に向けて走っていると、別室から、さらに目立ついろかみの美少年、おんが顔をのぞかせた。
「どうした、のん。まさか」
「そのまさかです!」
 みなまで言わせずさけんだのんに、おんも天をあおいだ。
ちかごろは平和だったのに」