『かくて暴かれるのは』幽霊の追手
縦横変換「面白いことに首を突っ込んでいるわね」
挨拶もそこそこに笑顔で言う、長い白髪に、紅い瞳の女性。情報屋、風薫は、極端に色素の薄い少女だった。
「あー、まあ、そうっすね」
対する聖也の歯切れは悪い。風薫に応援を頼んだ後、事態は妙な方向に大きく動いてしまった。今となっては、外部から来た情報屋の存在は、情報漏洩のリスクすら孕んでいる。
「アンタんとこの会社が自分から事件に飛び込んでいくのは、いつものことだけど。今回は、大当たりだったみたいよ?」
何せ、絡繰師の匂いがするからね。にっこりと笑顔で告げる彼女は、果たして何処まで今回の真相に近付いているのか。
「やっぱり、絡繰師っぽいっすかー」
「だって、あまりに犯人の情報が消されすぎているもの。絡繰師お抱えの幽霊でもなきゃ、そんな強引な真似はできないわ。で、アンタんとこの社長さんが、現場で拾ったっていう女の子が、怪しさ抜群だと私は思うのよね。あの子は絶対、幽霊と知り合いよ」
幽霊と称される、絡繰師の三人目。知り合いどころか、当人でしたと喉元まで出掛かったのを呑み込み、聖也は首を傾げて見せた。
「そんなにアンジェの嬢ちゃんは、情報が無かったっすか。風薫ちゃんのツテを持ってしても?」
「ええ。貰った写真から検索しても有楽部光希にしか行き着かないけど、アイツはそもそも男だし。アンジェなんて割とありがちなハンドルネーム、中の人を絞ろうとしても、余計に謎が深まったわ。特に、ハンドメイド作家のアンジェと情報屋のアンジェ。私から見たら幽霊一味と大差無しよ」
おお、大正解。と、口に出せず、内心で拍手する聖也。
「ふふ、考えれば考えるだけ、調べれば調べるだけ迷宮入りするこの件は、私にとってもすごく興味深いの。せっかく幽霊の尻尾が掴めるのだったら、私は悪魔にだって喧嘩を売ってやるわ。だからね、聖也」
アンジェの使っていた客間に案内してくれるわよね。
風薫の言葉は、最早要請だった。ついでと言わんばかりに聖也に突きつけられた無機質な耀きのことも併せれば、立派な脅迫とも言えた。
「何つう物騒なもんを持ってきてるんっすか」
「あら、レディの鞄の中身を詮索するのは、紳士的ではなくてよ?」
「俺、別に紳士じゃないんすけどねー」
姉の真理亜を見習って少し鍛えておけば良かったかと思っても、聖也にとっては後の祭り。
大げさに嘆息すると、聖也は風薫を連れ、白華にあてがっていた部屋へ向かった。