『かくて明らかになる』罠の中

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 せいもどってこないからと、耀かぐしょさいでは、アンジェの開く雑貨店の話に花がいていた。せいければ、その場にいるのは女性のみ。たりさわりのない内容ともなれば、話題はおのずと限られてくる。
 そのうち、はっがどことなくそわそわとし始めた。おんから、もう少しでとうちゃくするというつうしんを受けたためだが、今は耀かぐしょさいにいるために、むかえることができない。
 それからまもなく。
 さっと顔色を変えたはっが、くちびるおのかせる。そのまま、耀かぐの疑問の声や、の制止をって、しょさいを飛び出した。
 長時間満足に歩けないはずのはっが、全力しっそうしてんだ先は、かのじょあたえられていた客間。あわてて後に続いた女性二人が部屋をのぞくと、そこには予想以上の人間が集まっていた。
 大きなあみらえられたてん使、満面のがおふうろたえているせい
「これだから、人間は!」
 悲鳴に乗せてさけぶ少女に、つばさ持つ少年が強い視線を送る。
「来るなと言っただろう!」
「だからっ、人間なんて、関わったってロクな事にならないって! そこの女は、どんなにそとずらだけ似てても、おんじゃないっ」
 自分のことを言われたとさとったふうが真顔になった。あみらえられたしゅんかんていこうしようとしたてん使ふうの姿を認めたしゅんかん、大人しくなったのには、何か理由があってのことだと今の会話が示していたからだ。
 わなの中のてん使すがいたはっは、何を思ったのか、に巻いていた包帯をほどきだした。
 そういえば、と耀かぐは思う。はっの傷は、かのじょ自身がりょう機関へのじゅしんこばみ続けていたこともあって、応急手当のみの状態だった。だが、それだけにしても、不自然な点があったのだ。いつまでも、いつまでも同じように手当を続けている。それはまるで、傷が自然には治らないものであるかのような。
「馬鹿っ、よせのん!」
 カノン、と呼んだてん使に、呼ばれた少女ははかながおを見せる。
 包帯の下から現れた傷に、だれもが息をんだ。