『かくて機械屋の本領発揮』大改造
縦横変換 全ての修理とメンテナンスが終わって、奏音が目を覚ましたとき、作業開始から既に三ヶ月経っていたこともあり、絡繰師の存在はすっかり龍神警備会社の中に溶け込んでいた。ついでに、何故かちゃっかりと、情報屋、風薫の存在も。
「大丈夫っすか。違和感は?」
「えーっ、そんなの大丈夫に決まってるでしょ! ね、奏音?」
心配そうに訊ねたのは勿論聖也で、本人が口を開く前に答えたのが天音である。奏音は自身に診断プログラムを走らせ、特に異常の無いことを告げた。その報告に、室内がわっと沸く。
「だいぶ丁寧にしていただいたんですね」
季節が変わるほどの時間、眠っていたことを読み取り、奏音が首を傾げると、龍神警備会社の面々と璃音は苦笑し、天音は明後日の方向を向いて下手な口笛を吹き始めた。明らかに、何か怪しいことが起こったような雰囲気である。
「まあ、我々は本業もあったからな」
耀夜が言うことも一理ある。しかし、天音の態度が全てを裏切っている。
じっと奏音に見詰められ、天音は早々に降参した。
「いや、ちょーっと改造しただけじゃん?」
「あれを少しと言うのか」
呆れたように、璃音がぼそりと突っ込んだのが、奏音にはしっかりと、聞こえてしまった。これにはもう、嫌な予感しかしない。
改めて、今度はじっくりと自己診断を、と精査プログラムを走らせた刹那、以前数秒かかっていたことが、今回文字通りの刹那で終わってしまったことに、奏音は思わず目を瞬かせた。しかも、体内の部品の殆どが変更されている。おまけに、以前はさほど使用していなかったはずのナノマシンが、量も種類も大量増殖している。
断じて、ちょっとした改造どころではない。本気の大改造だ。大量に増やされた新機能を把握するのは一瞬だったとしても、意識に馴染ませるのには少々時間を要しそうな、そんなレベルである。
「因みにボクも同じくらい改造しておいて欲しいなって思いまっす!」
脳天気に言う天音に、流石に奏音は悲鳴を上げた。
「ちょっと、天音兄さん、何考えてるんですか?」