ブラックボックス

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 そんなこんなを経て、なんとか素体そたいが完成しそうです、わーぱちぱち。
 璃音りおんと並べることを考えながら作ったせいか、本来似せるはずだった、若かったときの写真のぼくよりも可愛かわいくなっちゃったけどね!
 璃音りおんがカワイイのが悪い。てか、ぼくが若いころから生意気だったのも悪い。あんな悪ガキの姿は、ちょっと再現したくなかった。
 元々のぼくの目は、ちょっと緑っぽい茶色なんだけど、素体そたいの目は瑠璃色るりいろにした。璃音りおんかみの色と、おそろいの色だ。かみの色も少し遊んで、元の茶色よりは少しあかくした。だって、璃音りおんの目が赤いからね。
 おっと、興奮しすぎて、少しよろけてしまった。頭の上に機械を乗せているからバランスが悪いのか、ちょっと機械の設定をいじって、ぼくぼくたらしめている記憶きおくや思考のくせ、いわば精神、もっと言うなればたましいみたいなモノを、全力で高速に吸い上げさせているのが原因か。
 この機械の理屈りくつだけは、ぼくもあまり、わかっていない。絡繰からくり人形を動かすブラックボックスとして、ぼく以外の研究者が作り上げた機構だ。最初は、本当に文字通り、人形を動かすプログラムの収まった黒い箱の形としてわたされて、人形にんだ。それが、ふたを開ければ人形が動くどころか、自立的に思考するし、人間らしい受け応えをするものだから、すごく喜んだのを覚えている。ま、ぬか喜びだったけどね。その子にはものすごくおびえられて、精神的ダメージがすごかったけどね。
 これを作った研究者は、確か、陽浦ひうら博士だったように思うんだけれど、かれは何を思ってこんなモノを作ったんだろうなって、璃音りおんを得てから考えるようになった。ぼくみたいに、きっと最初は何か、純粋じゅんすいな願いがあったと思うんだ。それを、ぼくのように、組織に利用されただけのような気がしてさ。
 今はこの通り、ブラックボックスの作成に必要な機械もぼくの研究所にある。陽浦ひうら博士に最後に会ったのは、いつだったっけ?
 うーん、思い出せないや。もう記憶きおくを機械に吸われてしまったのか、それとも、いつの間にかかれも、組織に粛正しゅくせいされていたのか。そういうの、否定できないのがつらいよね。本当、ろくでもない組織に属してしまったものだ。
 機械の理屈りくつわからないけれど、機械の構造は普通ふつうわかるから、こいつの設計図はひっそり、記憶きおくしておこうと思う。一応、ぼくぼく自身の最期さいごの作品で、まさか次を作ることがないとは信じているけれど、念のために、ね。