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先生との、(神代望視点)

 退院して、誠の家に転がり込んで、在宅プログラマーとしての仕事が軌道に乗ってきた頃。
 俺は衝撃に、固まっていた。
「に、似てる……!」
「そりゃそうだろ、親子だぞ」
 守が、退院後の何とやらで、訪ねてきた。それは分かっていたけれど、何か都合があったらしくて、小学生の子どもまで連れて。
 守って、家庭持ちだったんだ……。
「パパ、ここがマコトにいちゃとノゾムにいちゃのおうち?」
「そうそう。ほら、ひとのおうちに上がるときは?」
「おじゃまします!」
「あ、ああ、はい、どうぞ」
「よくできたなー」
 す、すごい。完全に、「パパ」だ。そりゃ誠の保護者もできるわけだ。
 その誠の姿がないが、彼は今日は外来勤務で、大学病院に出勤している。
 さすがにかなり距離があるからか、よっぽど強い思念でなければ、互いの気持ちは微かにしか届かない。これは、退院して初めて分かったことだ。
 まあ、仕事するなら、その方がありがたいけどな。
 そんなことを思いつつ、家の中を案内する。リビングには、写真や絵がたくさん。誠の密かな趣味だったらしい。俺の仕事部屋は、元々そういう趣味の為のアトリエにしていた部屋を改装して確保された。寝室には、二人で寝ても問題ないくらい大きなベッドが一つ。あと台所とか浴室とかお手洗いとかの広さや配置について聞かれたし、確認されたし、書類に書き込まれてた。リハビリがちゃんと実生活を支えられるものであったか、評価する必要があるんだそうな。
 守が書類に記入している間、守の子どもは興味津々な様子で俺の首元を見てきた。
「にいちゃの首の、ガイカク?」
「うん、そうだな」
「さわって良い?」
「うーん、嫌かな。これは、誠と、あとお前のパパにしか、さわらせたくない」
「なんで?」
 なんで、か。
「誠は大切な人だから。お前のパパは、これのことよーく分かってて、手入れできる人だから」
「じゃあ、ガイカクのことよーくわかったら、さわっても良いの?」
「それが仕事にできるくらいになったらね」
 子どもは、パッと父親を仰いだ。
「大人になったら、パパの後継ぐ!」
 お、おおう。これはまた、思い切らせてしまった、か?
「望、お前……」
「他の外せるやつならともかく、首元のはさすがに」
「それもそうか……。いや、こいつ、前に誠にも同じこと聞いて、これまた全く同じ反応返されててな」
 それは意外、だ。
「誠の外殻、今かなり広がってるのに?」
「あれだけ体外に鳥籠か何かのように広げたくせに、触れて良いのはお前とオレだけらしい。しかも全く同じ理由で」
「う、わ……」
 顔が赤くなった、自覚があった。首元で、蔦が少し、巻いた。
「甘酸っぱい青春だな。見た目は」
 守がそう言うのは、結局俺もちょっぴり見た目が若返って、誠と同じ二十歳前後に落ち着いたから。でも、俺がもうすぐ二十五歳になるの、分かってるくせに。
(……望?)
 ——あ。
「そろそろ誠も帰宅してくるかも。繋がってきた」
「午前までの仕事だったな。帰ってきたら、食事行くか」
 守の子どもが「お昼ごはん!」と反応する。
 この子が守の後を継ぐなら、それはそれで面白そうだな。そう思わないか? 誠。