疑問だらけ

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 目が覚めたら、魔物に取り囲まれていた。……いや、魔物、なのかな?
 魔紋まもんを持っているけれど、各々おのおのの瞳には理性の輝きが見える、気がする。それに本来、魔物は群れないとも習ったのに。
 ……魔物に取り囲まれて、それ以上何もされないというのも不思議なんだよね。本来なら、とっくの昔におそわれてるよね?
 何にせよ、場を取り巻く空気はおだやかで、僕を取り巻いている魔物たちも各々おのおのにくつろいでいたり、微睡まどろんでいたり。
 僕はと言えば、胸はまだズキズキするけれど、頭のガンガンとした痛みは消えている。ただ体に力が入りにくくて、起き上がれるようには思えなかった。
「ピュイ!(おはよう、ジン!)」
 上空から、魔物ではなくグリフォンが舞い降りて、一声鳴いた。何故なぜか、内容が理解できてしまって、僕は面食らった。しかもきっとこのグリフォン、幼い雄だ。
「ミュウ、ミュ(おはよう、もう少し静かにな)」
 何者かが僕の耳元で返事した。甲高かんだかい小動物の鳴き声……のはずなのに、重なって青年を連想させる思念が聞こえる。
「ミュミュ、ミュウ……ミュ(あんまり大きな声出すと、彼が起きてしまうだろう……って、もう起きてたか)」
 真っ白な小動物が、僕の顔をのぞんだ。彼の背後で、大きな尻尾がゆらゆらと揺れている。
(うーん、もう少し掛かりそうなんだよなぁ。随分ずいぶん前から我慢がまんしてたのがとってもよくわかるというか、こびりついてる余剰魔力よじょうまりょく頑固がんこというか)
 独り言のようなその思念の中に、気になる単語がいくつも聞こえた。僕は思わず、目の前の白い小動物を凝視ぎょうしした。
余剰魔力よじょうまりょく?」
 小動物は、ピンと大きな耳を立てた。その仕草から、彼にとっても想定外のことだとうかがえた。
「ミュッ⁉︎(あれ、オレ声に出してなかったよな⁉︎)」
「ピーィ(出してなかったよ。何か言ってたの?)」
 魔物の輪に何食わぬ顔で加わっていたグリフォンが問いかけると、白い小動物は僕とグリフォンとを交互に見る。
「ミュウ……(この人間をおかしている余剰魔力よじょうまりょく頑固がんこだって話……、もしかして、聞こえてるか?)」
 最後の声無き問いかけは、きっと僕に聞いたのだろうと思ったから、うなずいた。
「ミ……(ああ、うん……こりゃ、そうかもしれないとは思ってたけど、本当に、大変な体質だ)」
 絶句しても思念の駄々漏だだもれている小動物は、気を取り直したように声を上げた。
「ミュウミュ(じゃあ、改めて、おはよう。そして、聖域へようこそ)」
 聖域。近頃は物騒になったと聞いていたけれど。もしかして、おとなしい魔物がいっぱいいるのと関係があるのだろうか?
 小動物に問いかけると、その通りだと言う。魔物から浄化されたい者たちが集うので、傍目はためには魔物が集う島、魔の島と化したように見えるのだと。
「魔物から浄化……ってことは、元に戻れるんですか」
(そうだ。だから、動ける者たちはこうしてやってくるし、最近はアンタみたいに、リオニスが連れてくる場合もある)
 説明を一つ聞くと、更に疑問が湧いてくる。思わず小動物相手に質問攻めをしてしまったけれど、彼はこころよく答えてくれた。