プロローグ

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「なぁ、私の最期のお願い、聞いてくれる?」
 私のご主人様は、そう言って私の頭をでた。
「縁をつないだ玉石パペットを、見守ったって? んでもってね、き宝石華の誕生を寿ことほいだってくれると、もっとうれしいなぁ」
 ボロボロの草臥くたびれたミミズクの器を、ご主人様はそっとでてくださる。私はもう器が限界で動けないのに、それでも願い事をたくしてくださろうとして。
「アンタなら、きっとかなえてくれると思ってる。ずっとずっと私らを見守ってきて、とっくに宝石華として開花しているアンタだもの。ここでち果てるのは、ちょっと勿体無もったいないでな」
 私の仲間が、たくされた願い事をかなえようとして魔法を使ったのは、遠い遠い昔の話。何かしらのお守り石を核に、生き物を模した器をまとい、たくされた願いに応じて魔法を使う私たちを、人間ヒトは玉石パペットと呼ぶ。人間ヒトと共に成長した私たちが開花すると、宝石華として更にできることが増えるのだけれど、それを知っている人間ヒトはあんまりいないかもしれない。多くの人間ヒトの間では、宝石華は奇跡をもたらす自然の精霊だと思われているのだとか。
 そんなだから、宝石華が最後の願いを心に決めたらどうなるのか、知っている人は本当に一握ひとにぎりだ。私のご主人様も、きっと知らないだろう。
「ふふっ、もっと旅して、色んな出会い、してみたかったなあ……」
 私の最後のご主人様は、とても病弱な体質で。なのに心のままに無理して旅をして、寿命を大幅にけずってしまった。さらにこの後に及んで、私に願うのはご自身のことではないのだ。
 だから、私は……