エピローグ
縦横変換 無茶な願いをしたとは、解っていた。いくら、この優しそうな顔をしたミミズクのパペットが、古くから伝わる良縁の守り神だったとしても。布地は擦り切れてしまいツギハギだらけ、お守り石に据えたアメシストも、色が薄いと言われるようになり。
宝石華だと思ったのは、たまに枕元にアメシストが増えているから。きっと花開き、実を成してくれたのだろうと信じていた。
色が薄いと言われても、気にしていなかった。だって、旅先で、見たことがある。骸骨水晶の、蠱惑的な輝きを。私の可愛いミミズクは、きっと成長したのだ。
だから、このまま私と一緒に朽ち果ててほしくなかった。それこそ宝石華の神様に縋る気持ちで、【最期の願い】を口にした。
なのに。
サラサラと、ミミズクのパペットが、その形を崩していく。私の指と指の隙間から零れ落ちる、仄かに光を帯びた淡い紫の……
ああ。
ごめんなさい。ごめんなさい。やっぱり、無茶な願いだったのだ。
そっと、誰かが私の涙を拭った。
「ねえ、泣かんといてよ」
どこかで聞いたような、聞いたことのないような、奇妙な感じのする声。
「泣かれたら、私、どないしたらええんよ。ねえ、ご主人様」
目が合ったのは、毎朝鏡で見るのと同じ顔。いや、その目だけが、紫色に輝いて。
「一緒に行こう、ご主人様。私と一緒に、見守ろう?」
せっかく明瞭になった視界に、また水の膜が張った。
もちろん、私の答えは……