『かくて奏音は拒絶する』恐ろしい妄想

縦横変換

 のんの本音からすれば、なるべく、動きたくはなかった。身体からだのあちらこちらに負ったダメージは大きく、動かすたびにエラーを伝えてくる。
 後からあまおんに回収してもらおうと、きゅうみん状態に入ろうとしたその矢先、人間たちにこされてしまった。
 きゅうみん状態に入れば、マネキンにんぎょうなり、死体なりに見えるだろうか。そして、願わくばそのまま、どこかにはいしてくれれば良い。
 そんなのんの願いもむなしく、だれかがりょうかたを、強い力でたたいてくる。さぶってこないあたり、正しいりょう知識を持っている者の動きだ。直前に、というおんな単語も聞こえていたため、のんしぶしぶ周囲をかくにんすることにした。
 家に、かくにんを取られては困る。のんは、一族からすればはい・処分したはずの、つまりは、もう存在しないはずの存在だからだ。
 しかし、目を開けたことを、のんぐにこうかいすることとなった。まさかの、りゅうじんけいがいしゃの、しかも社長おんみずからにかいほうされていたとは、思いもしなかった。
 ……いや、ある意味、目を開けて正解だったかも知れない。りゅうじんけいがいしゃは、後始末もきっちりとする、優良なかいしゃだ。もしも目を開けずに、身元不明の死体と判断された場合、最悪、まいそうされていた可能性もある。
だいじょうか!」
 耀かぐが、のんかくにんする。のん耀かぐを見上げ、この場合はどう返事すれば無難なのだろうと、かんがんだ。
 しんたいてきには問題だらけで、全くだいじょうではない。じょうきょうだって、とてもだいじょうとは言えない。けれども、人間用のりょう機関に運ばれても、そこではのんりょうすることはできない。
 それどころか、いっぱんてきな人間から見れば、オーバーテクノロジーになる自分は、実験対象になって分解される可能性も。そこまで考えて、のんは真っ青になった。
 結論。何が何でもさねばならない。人間につかまったら、のんに未来はない。