『かくて奏音は拒絶する』自爆条件の穴
縦横変換 場を沈黙が支配した。自爆とはまた、心穏やかならぬ単語が飛び出したものだ。
強制シャットダウン状態の奏音は、気絶しているようにしか見えない。耀夜は、この少女をどうしたものかと、天を仰ぎたくなった。
「手伝いましょうか」
真理亜がそう言いつつ、耀夜の腕から奏音を引き受けるべく、触れる。しかし、その動きは、直ぐに凍り付くこととなった。
「他者ノ接触ヲ確認シマシタ。警告。自爆ノ条件ガ満タサレテイマス」
「……は?」
突如として少女から響く無機質なアナウンスは、淡々と非常識な警告を発する。
「自爆ノ条件ガ解除サレテイマセン。自爆マデ、残リ三分ヲオ知ラセシマス」
周囲がどよめく中、耀夜と真理亜は顔を見合わせた。
「真理亜」
「危険です、社長」
「手を離してみてくれないか」
「ですが」
耀夜の強い視線に、渋々奏音から手を離す真理亜。
「報告。自爆ノ条件ガ解除サレマシタ。自爆ノ実行ヲ中止シマス」
ふう、と嘆息し、耀夜は物騒極まりない少女を、抱え直した。アナウンスによる警告は、聞こえない。
「『これ以上さわるなら、自爆します』だったな。なるほど、既に触れていた私は例外か」
「社長、まさかとは思いますが……」
「見捨てるわけにもいかないだろう。一旦、屋敷に連れて帰る」
真理亜の渋面を見た耀夜は、苦笑した。
「ここに置いていってみろ。不用意に触れた誰かが爆発させるとも限らんぞ」
「それは自業自得です。それより、その少女。無事に起きたとして、素直に手当を受けてくれるとでもお思いですか」
「難儀しそうだな」
それでも奏音を離す様子のない耀夜に、真理亜はやれやれと肩をすくめた。
「どうして社長は一癖も二癖もある者ばかり、拾ってしまわれるのですか」
「助けられるのであれば、助けてあげたくないか?」
その言葉に込められた闇を知っている真理亜は、今度こそ眉間に皺を寄せた。