『かくて耀夜は白華を構う』甘えなくとも甘やかす

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 はっと少女を名付けたは良いものの、かのじょ耀かぐや周囲のあたえようとするものをことごとく断ろうとしたため、結局耀かぐに気の休まるときはなかった。
 まず翌朝、新たな服へのえを断ろうとした。もちろん、それだとえる側としておもしろくない、もとい不潔であるためはっの意見はきゃっされ、その日のうちに何人かの見立てで客間のクローゼットにさらに洋服が追加された。どんどん運ばれてくる洋服を見て、はっの表情は引きつっていた。
 その次に、朝食を断ろうとした。朝食だけであればまだしも、よく聞けば、食事ぜんぱんきょしそうな勢いだったため、見かねた耀かぐもうれつに説教し、見張り、結果、はっは半泣きになりながら食事をった。ただし、それこそ、小鳥のついばむ程度に。
 はっからすれば、そもそもの食事の形態が人間とは異なるというか、光発電さえできれば十分に動けるところを、食事の分解に余計なエネルギーをかれることになる。傷ついた身体からだのことも相まって、食事はともえんりょしたいところだったのだが、正体をかくしている現状では反論ままならず。
 食後、食事の分解に要するエネルギーを確保するために、まどぎわで半きゅうみん状態になっている姿は、一見何かの絵画のように美しくはあったが、あまりにも長時間、ピクリともしないために、たびたびだれかが生死かくにんおとずれる羽目になった。
 しんさつを受けるよううながしても、はっおびえ、きょぜつする。
 返事の一言目からしてまず「すみません、結構です」、二言目には「構わないでいただけませんか」、三言目には「もう帰りたいんです」、そろそろ言われる言葉に予想が付きながらも耀かぐが客間をおとずれると、はっは相変わらずまどぎわで、かざられたにんぎょうのようにじっとすわっていた。
はっ
 声をけると、びくっとかたふるわせ、おそおそるといった様子で耀かぐを見上げる。手負いのけものほう彿ふつとさせる様子にしょうしつつも、耀かぐはっに、けいたいつうしんたんまつを差し出した。
ひまつぶし用に、一個けいやくしてきた。家にれんらくするなら、しても良いぞ」
 はっはまじまじと耀かぐの手の中のたんまつを見つめている。はっぐにきょぜつしないのは、初めてのことかもしれなかった。
「ですが、そんな」
 はっと我に返り、断りの言葉を口にしようとするはっの手に、耀かぐたんまつにぎらせた。数秒のもんちゃくの末、はったんまつを手に取る。
「ありがとう、ございます」
 ようやく聞けたお礼の言葉に、耀かぐは破顔した。おそらく、外とのつうしん手段をわたすことで何かしらのそうどうはあるだろうとけいがいしゃの社長として予想している耀かぐだが、それでも現状を打開できそうなはったいは喜ばしかった。