『かくて暴かれるのは』白華の正体

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 とうとつに開いたとびらに、耀かぐと、とったおれそうになったかのじょを支えたが、体勢をくずしながらも部屋になだむ。
 だいから手ぶらで飛び立つ、つばさ持つ子どものかげてん使が飛び去った部屋には、あの見事ないろかみを持つ少女の姿はなく。
 けれど、くりいろかみを持つ子どもがだいたたずんでいた。
「そこの貴方あなた、動かないことですね!」
 そうかくした後のの行動は、じんそくだった。そくに体勢を立て直し、しんな子どもをだいから室内にきずりみ、ゆかさえつける。一連の身のこなしは、プロフェッショナル特有の流れるような、いっさいもない見事なものだ。
 さえまれた子どもの方は、声すら出ない。いや。みょうなことに、出さないのだと、は感じた。当人からすれば、身の危険をこの上なく感じるはずのじょうきょう下であるにもかかわらず、ていこうりは全く見せなかった。ぼんじんであればはんしゃ的にでももがきそうなものだが、それさえせずに、完全にされるがまま。
 ますますけんしわを深くするの背後から子どもを観察した耀かぐは気付いた。見覚えのある服装。地味ないろたんぱつの下からのぞく、一筋のあわ耀かがやき。いろの、すなわちはっかみいろ
「そうか、道理で……」
 けいがいしゃの社長宅のセキュリティシステムにさえかいにゅうできるハッキング技術を持ち、おそらくは電脳世界にも明るい。からくりの起こす事件をだれよりも早く察知し、からくりが直々にむかえに来る人物。
 大きなかんちがいをしていたことを、耀かぐさとった。からくりにとっては、アンジェのハンドルネームを持つ少女は決してじゃものなんかではない。むしろ、かのじょこそが。
「一人は、実在すら定かではないゆうれい、か。すっかり、失念していたな」
 意を決して、の横から子どものくりいろかみに手をばし、引っ張る。それはいともやすく、耀かぐの手に収まった。
「ああ、やはりかつらか」
 とは言いつつも、くりいろかつらがあるのとないのとでは、はっふんには大きなへだたりがあった。広がるいろかみと、それにともなふんの変化に、完全に予想していたはずの耀かぐですら目を見張ったし、は、いつしゅんはっさえる力が弱くなった。もっとも、次のしゅんかんには前以上の力でさえつけたのだが。
はっ
 呼びかければ、はっが動かぬまま、視線だけを耀かぐに向けた。だんなら落ち着きなくれて、ぐにらされる目が、今は静かに耀かぐを映して動かない。
「お前、もしかして、アレだな? からくりの、三人目」
 目をの下で、はっは一度だけ首を動かした。
 こうていだ。
おどろいたな。てっきり、都市伝説の一つで、実在なんかしないと思っていたが」