訣別
縦横変換 あれ、ここは何処だろう。璃音は、何処に行ったんだろう?
見渡す限り、瓦礫の山だ。スクラップになっている機械群に、何となく見覚えがあるような、ないような。
「璃音?」
呼んだ自分の声が幼い。なのに、不思議に思わない。
それもそうか、この身体は。僕が、造った。
そうだ、ボクは!
一気に目が覚めて、慌ててもう一回、周りを見渡す。
うっわぁ、僕だ。これまた見事に、瓦礫に押し潰されちゃって。流石にこれなら、組織の追っ手も来ないんじゃないかな。
あれ、その僕の頭に乗せていたはずの機械がない。もしかして、璃音は、それを始末しに行った?
「天音にぃ!」
瓦礫の山を文字通り飛び越えて、瑠璃色の堕天使がボクの胸に飛び込んできた。以前ならつむじが見えていたのだけれど、今は瞳が目の前だ。
「良かった、起きてくれた。もう二度と、逢えないかと思った」
「ボクってば、そんなに寝てた?」
冗談のつもりで言ったら、璃音が思いのほか深刻に頷いた。
「見ての通り。そろそろ逃げないと見つかる限界かもしれない」
確かに、研究所はボロッボロである。僕の生死を確認する人間が来る前に、逃げ出す必要があった。
「そっか。よし、じゃあさっさとトンズラだ!」
「そうだな」
耳を澄ませばパチパチと火の音も聞こえる気がするし、本格的に危険になる前にさっくり行方をくらませないと。行き先は、ひとまずは璃音のいた貧民街で良いか。違法廃棄場の地下に、新しい拠点を確保する案、なかなか良いと思うんだよね。どうやって掘るか、考えないとだけれど。
まあ、なんとかなるさ。そんな気がする。何せ、璃音が共にいてくれるんだもの。
璃音を追って、隠し通路に身を躍らせた。
さようなら、僕が人生の殆どを引き籠もっていた研究所。そして、そこに眠る僕。