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声を掛けても反応がない相方は、きっといつものように電脳世界に意識を沈め、当面の資金確保の為に、後ろ暗い企業の後ろ暗い口座をハッキングしているのだろう。よく見たら、瞳に淡青の輝きが映り込んでいる。確定だ。星の瞬く間に嵐のように電脳世界を荒らす相方だが、まさか自身が幽霊と呼ばれているとは思ってもいまい。

【淡青】【嵐】【星】【ハッキング】
#小説 #150SS
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『こんな雨だし、今日は無理に出掛けないでまったりと香草茶でも楽しもうかな』……なんてね。憎たらしいほど晴れ渡った窓の外と、別窓の天気予報をチラリと確認してから、投稿ボタンを押す。偽りの情報を書き込むことに罪悪感は無い。電脳世界に馬鹿正直に情報を上げると、身元を特定されて面倒事に巻き込まれるのだから。

【雨】【香草茶】【電脳】【偽り】
#小説 #150SS
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はっと気付けば目の前にはペンデュラムが揺れていて、これってそんな催眠の道具じゃなかったハズなんだけどなぁと、情け無い笑いがこぼれた。虹を追いかけるなんて、そんな、泡沫の夢にしても有り得ない。ボクの義肢が……いや、それ以前にボク自身の体力が、耐えられないのに。それでも無性に悔しくて、目頭が熱くなった。

【義肢】【虹】【泡沫】【ペンデュラム】
#小説 #150SS
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霊峰と名高きその山の頂上は、麓から見上げても、常に雲に覆い隠されている。棲みついている竜の気性が激しすぎて、上空から見ることも叶わない。そこには光を湛えたオーブがあって触れたもののリミッターを解除するのだとか、幻世への門があるのだとか、とにかく眉唾物の噂話には事欠かず、今年もまた、挑戦者たちが来た。

【光】【霊峰】【リミッター】【幻世】
#小説 #150SS
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今宵も酒場の片隅で楽器を奏で、詩を唄う。投げられるコインに彫られた愚王と同じ顔だと、誰にも気付かれぬまま。悪魔に仕掛けられた操り人形の術式を解くには、吟遊詩人の衣装に封印された己を、正しくこの国の王だと看破されねばならない。だが、もう良いのだ。豹変しようが、愚王となろうが、国民たちは気にしていない。

【封印】【吟遊詩人】【操り人形】【コイン】
#小説 #150SS
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現実はゲームの世界に侵食され、たまたま、そのゲームで二刀流のキャラクターを操作していたから、何とか生き残っている。そのゲームでは、クライマックスで月が崩壊するからと、狂科学者のジョブを得た友だちがシャボン玉のような何かで月を覆う計画を立てていた。あまりの荒唐無稽さに溜息を吐いて気付く、まさかこれは。

【二刀流】【崩壊】【月】【シャボン玉】
#小説 #150SS
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しとしとと、周りを包み込むように穏やかな音色に聴き入っていたら、うつらうつらと無自覚に舟を漕いでいた。はっと窓硝子に寄りかかっていた頭を持ち上げれば、もう雨は上がり、星が出ている。ノイズキャンセラーの助けも借りず、こんなに静かに日を過ごしたのは、久しぶりだ。遮光眼鏡を外して、大きなあくびを漏らした。

【音色】【無自覚】【硝子】【雨】
#小説 #150SS
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食卓は、まさに嵐の前の静けさで、次に誰が何を発言しようとも修羅場になることは間違いなかった。他人のオヤツを勝手に食べるのは、それだけの禁忌。母親は、黙って一枚の地図を場に出した。姉弟が、揃って息を呑む。何故ならそれは、姉の甘味の隠し場所を記した、禁断の地図。弟のオヤツに手を出した代償は、高くついた。

【甘味】【禁断】【嵐】【地図】
#小説 #150SS
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教団の者が声高に叫ぶには、その日、悪魔の呪いで天使が堕天し、その衝撃で人間界に大きな嵐が巻き起こされたのだという。なるほどと頷く華奢な子どもの横で、双子の少年が複雑な顔をしていた。確かにその話は間違ってはいないが、全てを詳らかにしてもいない。後に比翼と呼ばれる元悪魔と元天使の双子は、顔を見合わせた。

【 比翼 】【 双子 】【 堕天 】【嵐】
#小説 #150SS
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確かにセーフティモードを起動したハズなのに、漆黒の視界には文字一つ浮かばず、途方に暮れた。これでは、迷子だと救援信号を出すことすら無理だ。電脳空間の、七不思議やら都市伝説やらの逸話を集め、検証するだなんて、どうして自由研究のネタにしてしまったのか。
「www」
何かが聞こえて振り返った先、蜘蛛が……

【 漆黒 】【 蜘蛛 】【 迷子 】【 電脳 】
#小説 #150SS
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止まぬ雨を降らせ続けるとして、濃紺のドレス纏う雨乞いの巫女のレプリカの処分を頼まれた。レプリカ、ということは、どんなに可憐な見た目をしていても、これは心持たぬ空虚な機械人形だということ。いや、それでもこの見た目は壊すには惜しい。そう思ってダメ元でハッキングを試みたら、できなかった。依頼は偽りで……。

【 濃紺 】【 偽り 】【 雨 】【 ハッキング 】
#小説 #150SS
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崩れいく体をすくいあげようと伸ばした私の腕は、虚しく宙を切った。掌の上に残ったのは、小さな記憶媒体が一つだけ。狂わされた人工生命たちが次々に化け物のような姿にメタモルフォーゼしていくのに対し、自壊すると理解しながらも崩壊誘発プログラムを組んだ、私の大切な家族。遺された希望はあまりにも小さくて、私は。

【 メタモルフォーゼ 】【 崩壊 】【 人工生命 】【掌の上】
#小説 #150SS
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2024年11月21日(木) 19時36分50秒〔1日前〕